定電圧回路(電源)
1.基準電圧  
ツェナーダイオード

 シリコンダイオードに逆方向の電圧を印加すると、ある電圧で急激な降伏現象が起こります。5〜6Vを境に低い場合はツェナー降伏(トンネル効果による電子のつきぬけ)が、高い場合は電子なだれ降伏(アバランシェ降伏)が起こります。
アバランシェ降伏が起こると、ダイオード内でキャリアが過多となり内部インピーダンスが低下しダイオード端の電圧を下げます。電圧が下がるとアバランシェが起こりにくくなり内部のキャリアは減少し内部インピーダンスが上がり、これが繰り返されます。アバランシェ降伏は、このようにランダムなインピーダンス変動を伴う電圧変動が起こり、ツェナーダイオードの代表的なノイズとなります。 
 ルネサスのH.P.にツェナーダイオードの雑音に関するデータが載っています。見てもわかるように6V以下のツェナー降伏を使った方の雑音が低いことがわかります。

  HOME/製品/ディスクリート/ダイオード/共通事項/ツェナーダイオードに参考データがあります。
LED
 LEDは、ホールと電子の衝突により再結合させその時に出る(あまる)エネルギーを光に変える働きをします。ツェナーに比べてノイズが低いので変わりに採用する例が出てきていると理解しています。
電源の基準として使用する上で注意する点は、Vfの温特です。1個あたり−2mV/℃強の特性があるので動作電圧を考慮してLEDを選択する必要があります。
バンドギャップ
   三端子レギュレータなどICに内蔵されている基準電圧回路で、2つのトランジスタに異なる電流を流しVbe電圧の違いを基準として利用しています。数十mVの基準電圧を増幅させていますのでノイズはローノイズツェナーより大きくなります。しかしツェナーのようなスパイクノイズ(高周波ノイズ)がないので高周波回路の電源に採用しても問題が起こりません。(たとえば2倍の電流の差により約18mVの差が発生しその電圧を利用して基準電圧を作ります。)一部の製品でCRのフィルターを基準電圧に入れてローノイズ化したICがあります。
2.無帰還型レギュレータ  
どこに使うのか?
 今まで、シリーズレギュレータやシャントレギュレータなど負帰還型レギュレータを設計してきましたがDACの電源用に今回は無帰還型を検討することにしました。
デジタル回路とアナログ回路の混在している電源には、高周波やパルス負荷電流が負帰還ループ内に回り込んで悪さをすることが十分考えられるので、無帰還型が良いと思っている。
欠点は、負荷変動が大きいことや出力電圧を合わせ込むのが難しい点にあります。

【図1】 回路例
回路の試作検討
 PCM1702用の電源として±5Vの電源の見直しを行います。
基準電圧は、CEC DX-51mkUで使用されているLEDを組み合わせる方法を検討します。
まずは、LEDに電流を流すための定電流回路とLEDのVfの温特を含めて検討してみます。
 入力電圧12Vで下の回路を動かすとLEDの基準電圧が5.5Vくらいで出力は4.8Vくらいになっています。
 赤色LEDで電圧が少し足らない分シリコンDi1つを足して調整しています。
100mAの負荷変動で180mVの変動があるので、見直す事にしました。(実測)
帰還タイプでは無いためVbeが電流差で電圧変動が生じます。バンドギャップで説明しているように、この回路では、40倍ほどの電流差となるので計算すると95mVの変動が起こるわけです。
基準のLEDもベース電流の影響で50mVほど出ていました。
          2010/12/24 変更
 左図が、47Ω負荷をトランジスタでSWした出力波形を実測したものです。
 (測定環境が悪いのはご勘弁)
 ドライブ段のVbeの変動が出力に見えないようにすればよいので、インバーテッドダーリントン構成にすればということで検討しました。
+電源回路で2SC1013が使用したかったので左のような回路を作って見ました。
 (2SC1013の在庫が多い為)
現在使用しているDACのPCM1702は±5Vが必要な為、2SC1013のコンプリの2SA623も使用します。このトランジスタは、以前から評判がよいので購入してありました。
Vceoが20Vしかないので耐圧には、注意しましょう。(Vcerとした場合Vcboに近くまでOKかもしれませんが?)
 LEDは、秋月で購入したLT3U31P(赤色発光)を使用しFETは2SK170を使います。出力のCR定数は、実機で調整して行きます。 簡易的なシミュレーションで2mVぐらいしか変動が起こっていません。
2010/12/24 変更
 定数が適当ですが、実測で10mVぐらいの変動で改善されました。(左の上の波形)しかし、このままでは安定度に問題がある。(発振しやすい)
外付け定数を変更して左上の回路図で評価しています。
2010/12/28 UP
  DACの電源は、±Vddが必要なので、単純なインバーテッドダーリントン構成も含めて決めることにします。
2010/12/28 変更
  一度は、上の回路のようにダブルダーリントン構成を検討しましたが、回路の安定性(発振)と(負)帰還量が大きいためにパルス波形に対しスパイクノイズが大きいため普通のダーリントンによる回路構成に変更することにしました。
 2011/2/23 変更
  バイポーラトランジスタのVbe特性は、ベース電流が2倍変化すると18mV変化しますので最初から無駄なアイドリング電流を流してやり回路電流が変化しても倍も変化しないようにしてやれば、負荷変動による電圧変動が抑えられることになります。
適材適所で、対応してあげれば良いのです。
2012/6/30 追加
    
3.シャント型電源  
 オーディオアンプの電源は、電源トランスとアイソレーションをとり負荷変動をコントロールするシャント型又は複合型がベストと思っています。
シャント型の欠点は、負荷変動を吸収出来るだけのアイドリング電流を流す必要がありコントロールトランジスタの発熱が大きいことです。
下に、レコードプレイヤー用に作成したプリアンプの電源に使用した回路図を例に上げておきます。
入力は、AC55Vを整流して使用し、出力から55Vを取り出しています。
常時最大負荷電流+αの定電流回路で電流を流していますのでここのトランジスタの発熱がまず大きくなります。負荷に流れずに余った電流はシャントトランジスタに流れるためここも発熱が大きくなります。
エコ回路ではありませんが、オーディオの電源として満足できる電源を作る事が出来ました。
これを設計したときは、ツェナーのノイズを嫌って定電流回路と抵抗で基準電圧を作りました。 
 
 
 ジャンクションFETには、上のような温特があります。(ドレイン電流がある値の時に温度を変えても一定となるポイントがある。)このポイントをQポイントと呼んでいますが、これを利用すれば、ツェナー ダイオードに負けない基準電圧を作る事ができます。
オーディオ機器には、特にこの特性を利用したレギュレータや定電流回路を色々使用してきました。 
4.低飽和型シリーズレギュレータ  
 用途によりICを利用した電源も十分使用可能と思います。
ここで紹介するのは、入出力間電圧が小さい特徴のある電源です。一般的なシリーズレギュレータの制御トランジスタが、NPNであるのと異なり、PNPトランジスタで構成されていて、Vceの制御電圧範囲内なら低くても動作させることができます。
 ICタイプには、固定電圧タイプと外付けで可変する事のできるタイプがあります。
色々な回路の電源を考えた時可変できるタイプは、アマチュアにとって非常に便利な部品です。
参考に、テルミンを製作する時に使用したBA00CC0WTを上げておきます。
一般的なシリーズレギュレータと比べると出力がエミッタ接地増幅で帰還をかけた形式な為出力インピーダンスが高くなります。
 1Aタイプで入力電圧4〜24Vの範囲で使用できます。
 このパッケージは、足が1.75mmピッチに出ていて千鳥に加工されているタイプがあります。
これを使用すると蛇の目の汎用基板に45度斜めにピッタリさすことができます。
☆ 仕様書PDF
5.ローノイズレギュレータ  
 デジタルオーディオで低電圧レギュレータを検討する中で考え出されたシンプル電源です。FETの定電流特性を利用しているため入力の電圧変動に多少影響がある。色々な対策もありますが使い方など含めシンプルな構成で使用します。
   2017/3/14
 電流を流せるように出力をダーリントンにしたタイプが左の回路になります。
リップルリジェクションをよくするためにR2にパラにコンデンサを入れて使います。
下図の回路では、耐圧の問題で定電流回路の両端電圧をLEDのVfを利用して固定させている例です。定電流回路の電圧変動による影響を抑える使い方にも利用できます。
この他にも色々なバリエーションが考えられます。
このレギュレータは、ツェナーやバンドギャップを利用した物と比べてローノイズが売りになります。使用する場所によってはツェナーでもまったく問題ない場合も多くあります。
   2017/3/14
 
   
6.整流回路  
 整流回路における出力段コンデンサの両端電圧と充電電流をシミュレーションした波形。
コンデンサの内部抵抗によりコンデンサへの充電電流の影響が現れるためこの値を小さくするための案。私が、最初に考えたのではなくこのような設計をされている方がおられたので効果を確認しました。
回路図1 
 500Ωの負荷で半波整流では電圧リップルが大きい。
実機では、ほとんど全波整流なのでリップルは約半分になります。(ダイオードは、ショットキーを使用)
 
回路図2 
 470μFぐらいで実使用になるリップル電圧に収まっています。
しかし容量が大きくなったため充電電流が大きくなってしまいます。
これはしかたがないことである程度容量に比例して大きくなってしまいます。
特にパワーアンプなどの電源ではこのピーク電流を考慮した整流ダイオードを選ぶ必要があります。
(ダイオードのピーク電流maxをチェックする)
回路図3 
 このように2段構成にすると2段目のコンデンサへの充電電流を小さくすることができまた負荷回路への電源ノイズをある程度おさえることができます。
2段目のダイオードとコンデンサをパラにして負荷回路を独立させることが可能で、デジタルとアナログのアイソレーションが可能になります。
負荷が一定な為実際のデジタルの負荷変動にどの程度効果あるかは検討する必要があります。
7.スイッチングレギュレータ  
 秋月電子にキットとして販売されている電源を利用して可変電源を作成することにしました。
色々な回路を検討するのに最終動作確認を5V,9V,12Vなどの電源アダプタを使用して行っていましたが電圧確認が面倒でした。やはり1台でどのような電圧も作れるのは便利です。
  2014/12/20 up
 5種類ほどのキットがありましたが、サンケン電気のSI−8008HFEを使用した0.8〜24Vまで可変のできるタイプを選びました。
スイッチング方式で効率83%(Vo=5V、Vin=15V、Io=3A)なので性能もまあまあで低電圧領域まで1Aぐらい供給することができそうです。入力も電源トランスを使用するより24Vの電源アダプターを使用するととても小型軽量なユニットを作る事ができます。
 出力電圧はテスターで確認することもできますが使いやすさからメーターを取り付けることにします。
 キットに付いてきたボリュームを使わずに多回転のヘリカルポテンショメータ(20K)に変更します。
この端子が内部の基準電圧0.8Vと比較されて出力電圧を決めていますので計算から680Ωにしました。
出力電圧の表示がないと使いづらいのでネットにアップしているPICマイコンを利用した3桁のLED表示電圧計を作り内蔵することにしました。
   2015/4/30 UP
   
 上の写真が完成基板です。歩テンションメータは家にあった50kのものを流用しました。そのためパラに47kの抵抗を付けています。左が電圧計ですが、これはXKPさんのホームページに掲載されているものを利用させていただきました。スペースを気にしていないので片面基板で作りやすい大きさにしました。入力抵抗を40kにして25V表示をさせています。電源とトランスと一緒にケースに入れれば完成です。
 2015/5/5 UP
   

M.I.の趣味の部屋