CRイコライザアンプ
 1.回路検討  
イコライザ回路は、今まで真空管により3回製作しました。
まずは、マランツ7で採用されているNF型のアンプを12AX7Aで作った物です。次に、12AX7A,12AU7による SRPPとカソード接地の間にCR型イコライザを挟んだもの。
そして最後が、12AY7AのSRPP2段の間にCR型イコライザを挟んだものです。
 今までの結果を元に新たな回路でチャレンジすることにします。
諸先輩方の回路を参考に初段を五極管増幅とし、当然インピーダンスを高くしたCRイコライザをつなぎ、次段は出力インピーダンスをさらに低く出来るようにμフォロワ(SRPP)型を採用します。
下図が、アンプの回路イメージです。

【図1】CR型イコライザ回路
周波数 ゲイン
20Hz 19.27dB
40Hz 17.79dB
80Hz 14.51dB
100Hz 13.09dB
150Hz 10.27dB
200Hz 8.22dB
400Hz 3.78dB
800Hz 0.75dB
1kHz 0.00dB
1.5kHz -1.40dB
2kHz -2.59dB
4kHz -6.61dB
8kHz -11.89dB
10kHz -13.73dB
15kHz -17.16dB
20kHz -19.62dB
【RIAA特性】

左図にイコライザ回路を示します。
CRの値をそれぞれ、3.18mS,0.318mS,
0.075mSの時定数となるように決めてゆきます。
まずは、ドライブアンプによりR1の値を決めます。
5極管や出力インピーダンスの高い3極管の場合は、
100k〜330kΩぐらいを選びます。
それ以外の3極管では、30k〜100kΩとするのが
一般的です。
 次にR2をR1/14ぐらいに選び、C1を0.318
/R2でもとめます。
C2は、0.075/R2により決定します。R3は、次段
のゲートバイアス用となるので470k〜1MΩとしま
す。
計算結果をまるめると左の定数になります。

 リニアテクノロジー社が公開しているフリーのシミュレーションソフトを利用させてもらい定数の検討を行います。
 このソフトに真空管やトランスのパラメータを入れて回路のシミュレーションをされているのをネットで拝見させていただき私も今後環境を作っていこうと考えています。
 このソフトは、リニアテクノロジー社のホームページにアップされています。

 
検討中で時間が経ってしまって一部の回路を変更することにしました。
下の回路が変更した回路でイコライザの常数を低くするために初段のアンプを五極管の複合SRPPにしました。
 最終回路図

【図3】CR型イコライザ回路U

【図4】電源回路

【図4】5670の定数検討

 4図の緑色のラインが、上側の真空管の430Ωになります。
これにより、22kΩ弱が等価となります。普通のSRPPは、この値になりますがμフォロワでは、(交流)8.2kΩで増幅された
制御電圧が上乗せされるので、430kΩ相当になります。
 Rp=8kΩ,μ=35で出力の負荷抵抗を無視して計算するとゲインは、34倍になります。
今度、実測による検討も行って行き見直しをして行きます。
参考に、下図に標準のカソード接地回路とSRPP回路の場合を、SRPPμフォロワとの比較を下表にまとめておきます。

【図5】5670によるSRPPμフォロワ回路

【図6】5670によるSRPP回路

【図7】5670によるカソード接地回路

SRPPμフォロワ回路 SRPP回路 カソード接地回路
出力インピ−ダンス 300Ω 1.5kΩ 6.4kΩ
増幅度 34倍 27倍 26倍
負荷20kΩの増幅度 33倍 25倍 21倍

 SRPP回路は、プッシュプル動作をすることが出来るので出力インピーダンスが半分になると言う
  説明があったりしますが、実はもう少し低くなります。
  数値は、四捨五入でまるめています。

2.使用部品  
 真空管
  初段に小型の408A(五極管)を、2段目に5670(三極管)を予定しています。なぜ408Aを選んだかと言うと、WEの真空管が安く手に入るからです。
ヒーター電圧が20Vで別電源が必要ですが、電流が50mAなのでそれほど大変ではありません。
コンデンサは、基本的にカップリングコンデンサと電源のコンデンサにフィルムコンデンサ(ASC)を使います。
ヒーター用の電源は、直流点火させますので電解コンデンサを使用します。
イコライザ回路のコンデンサは、双信電機のSEコンデンサを使います。発売以来イコライザやフィルター用に使い続けています。
型番 ヒーター電圧
(V)

プレート電圧
(V)

第2グリッド電圧
(V)

プレート損失
(W)

増幅率 相互コンダクタンス
(mmho)

内部抵抗
(kΩ)

5670 6.3 330 1.65 35 5.5
WE403 6.3 180 180 1.7 5.1
WE408 20 180 180 1.7 5.0 340

【シルバニア社製5670】

【WE社製408A】


【6X5 or 6X5W】
 
 MC用入力トランス
   MC型レコードカートリッジを使用するためMCトランスを採用します。(ソフトンのPLT−1を予定)
このトランスは、非常にコストパフォーマンスに優れた製品で、オーディオDACのトランスI/V変換回路にも採用しました。
PLT−1
昇圧比 1次:1+1,2次:24
周波数特性 20〜100kHz(40Ω)
1次最大電圧 100mV
コア 78%パーマロイ
インピーダンス 1次:40Ω,2次:5760Ω

【図7】PLT−1(MCトランス)
 その他部品  

【PMC−35HG】





【PMC−1010H】










【フィルムコンデンサ】
 トランスは、市販の一般品から選びました。また電源のカップリングコンデンサには電解ではなくフィルムコンデンサを使用します。
 自作ケース 
 現在使用中のプリアンプ(ラインアンプ)やパワーアンプ同様にアルミの板を購入して加工して作りました。
両サイドの板(木)は、壊れたDATを再利用させています。
ダイレクト入力とトランス入力の切り換えを設けます。
電源トランスは、オリエントコアを使用したPMC−35HGを使い6X5により整流し10Hのチョークとフイルムコンデンサーによるπ型フィルターにより電源を作り出しイコライザに供給しました。
3.機能拡張  
 イコライザを製作していてせっかく作るのなら昔の色々な規格の特性に対応させたものを完成させようと思い機能拡張させることにしました。
RIAAは、1955年にRCAが音頭をとって各社まちまちだった録音特性を統一させたもので実際は「全米レコード工業協会」の略です。
以前には、DECCA,Westminster,COLUMBIA,RCAなどが異なるイコライザ特性を採用しており、その中からFFRR,NAB,Old RCA,Old Clumbiaへの対応を検討することにしました。
EQカーブ ターン・オーバー ロール・オフ
RIAA 500Hz 2120Hz
FFRR 500Hz 3000Hz
NAB 500Hz 1590Hz
Old RCA 800Hz 3000Hz
Old Clumbia 500Hz 1590Hz
4.さらなる進化  
 MCカートリッジをメインにしてきたので過去からトランスとMC用アンプと色々使用してきました。この経験を元に再度アンプタイプを考えることにしました。
これがうまくいけば、余ったトランスをDACの I/V変換用に持って行けます。
この回路は、特にたいした回路ではありませんが初段と次段を直結させて、ドレイン電圧が変動してもあまり次段に影響が出ないように考えた回路です。
入力信号レベルを考えると初段は、FETになります。真空管を使用することもできますが、ノイズ選別をしたりすることを考えると無理に使用する必要もないと思います。
過去FETも2SK30に始まり色々な物を使用しましたが、今回2SK170を選びました。
シミュレーションして動作確認はしましたが、テスト回路で音が満足出来るかこれから検討して行きます。
5.半導体イコライザ  
 現在メインにはLCR型のイコライザプリを使用していますが小型に電池駆動ができたらと思いカセットデッキのプリと同様の回路でRIAAカーブを作ってみることにしました。
   2018/9/17 up
 入出力は、電圧によるインターフェイスになっている。温度による安定性を考慮して入力のFETはサーボ側と2個入りのタイプを使用します。回路にはオフセット調整が入っていないが必要に応じて組み込みます。初段のFETを選ぶことにより1kHzで35dBぐらいのゲインを得ることができます。この回路は下側のミラー回路でベース電流分上下にアンバランスが生じるので多少の補正は必要になります。
ICで使用されているミラー回路のベース電流を考慮した回路例を下にあげておきます。ミラー回路を下のように積み重ねることにより正確に電流ミラーが実現できます。今回はシンプルイズベストで最小限の部品で構成した方が音には良いという考え方で上の回路を採用しました。
右の写真が1chの最終レイアウト基板です。回路図を見ていただくとわかりますが初段のFETにはソニーの2SK185を使用しています。イコライザのコンデンサは手持ちのSEコンを使用しました。電流出力部にCRを付けることによりI/V変換してイコライザ特性を得ています。
 2018/9/22 up 

*簡易シミュレーションでは問題なかったが帰還の2段フィルターでは位相が回って発振。変更した。
*最終部品記載の回路図をこちらに変更しpdfでリンク貼り付けしました。
                
 ステレオとして完成した基板です。1チャンネルあたり約10mAの電流が消費されますので006Pアルカリ電池×2個での使用で10時間以上持つことになります。長時間使うためにはリチウム電池を使用する必要です。電圧が下がってきてもダイナミックレンジが下がるだけである程度までは実用になると思います。
 外部電源を使用する場合は±12〜15Vかけた方が良いと思います。(ダイナミックレンジ)
 あくまでも個人的な判断ですが真空管でも半導体でもある程度電流を流して使用した方が音が(音楽)良いと感じています。そのため電流値は多めな設計になっています。
高域が多少不安定なので位相補償を入れた方が良さそうです。
  2018/11/13 up
   

M.I.の趣味の部屋