コンデンサ型ヘッドフォンアンプ
アンプの製作 回路図 基本特性 使用部品 H.P.スタンド 最新アンプ
1.コンデンサ型ヘッドフォンアンプの製作

 スタックスのコンデンサヘッドフォンを学生時代から使用していたので、何時か作ろうと考えていました。オーディオフェアーのスタックスブースでコネクタを分けていただき製作する事となりました。1988年4月号の別府氏の記事を参考に、ヘッドフォン仕様から回路を決めました。この回路は半導体を使った回路でこれを元に真空管に置き換えました。
 このヘッドフォンは、現在製造終了になってしまったΣproという製品で四角い箱のような形から巷で虫かごなどと呼ばれていました。構造的に感度が今売られているタイプより低いためプロシリーズの物でないと最大出力が低いためあたってしまうようです。
いまだにイヤーパッドの交換部品や修理の対応をしていただけるスタックス社に感謝します。
今後も大事に使用していきたいと思います。

2.回路図 UP

 回路的には、真空管を利用した2段差動回路でこれといった特徴のないものです。
初段に12AX7、2段目に6BL7を使用しました。6BL7の同等管に6BX7があり、こちらの方が知られています。
コンデンサーヘッドフォンには電極間にバイアスを与えなければならないためプロフェッショナルバイアスである580Vを高抵抗(10MΩ)を通して与えています。
帰還を掛けずに使用しているので1段目の負荷抵抗を68kΩと低めにして帯域を広げるようにしています。本来なら150kΩ以上にして帰還を掛けて使用した方がいいのかもしれません。
回路図をクリックするとPDFファイルが開きます。

3.基本特性  

 無帰還アンプですが差動2段構成で差動出力なため以外に低歪みで適度な周波数特性を示します。

4.使用部品  

 ●12AX7A・・・RCA

プレート電圧max 330V
プレート損失 1.2W
Rp 80kΩ
Gm 1250μmhos
μ 100
フィラメント電圧 12.6V
フィラメント電流 0.15A

 ●6BL7GTA・・・RCA

プレート電圧max 500V
プレート損失 10W
Rp 2.15kΩ
Gm 7000μmhos
μ 15
フィラメント電圧 6.3V
フィラメント電流 1.5A

 *6BX7GTと同様TV用の垂直発振・出力管です。

 出力をP.P.で最大700Vp-pほどの振幅が必要なため2段構成では初段でゲインを稼いでやる必要がありμが大きな定番の12AX7を、そして次段には電流を多く流したかったのでMT管ではなくプレート損失の大きな6BL7というGT管を採用しました。
多少こだわって共にRCAの真空管を使用しました。

5.ヘッドフォン・スタンド  
 スタックスの製品を参考(インターネットにある写真)にスタンドを作ってみました。
日曜大工で売っている普通の木材30×40mmの角材を長さ230mmを2本と50mmを2本に切断し底板は、90×120mmで10mm厚のものを使用しました。
ヘッドフォンを掛けるところにアールをつけてニスを塗って完成です。
ニスは、水性の物を3度ほど塗り1000番のヤスリ掛けをしてから2度ほど塗りました。
   

【ブロックの構成図
6.最新Cヘッドフォンアンプ 
 SICMOSトランジスタができたおかげで高耐圧のドライブアンプが簡単に構成できるようになりました。
電源整流ダイオードを含めてSICで構成したコンデンサヘッドフォンアンプを作ることにしました。 
真空管でも優れたアンプを構成できますが、SICはさらに高性能なアンプを作ることができる素子です。
まずは、SICを採用する方向でで検討しでいきます。
DC的な安定度を調べて問題が無ければこのまま作成しますが、電圧増幅率を200倍ほど必要ですのでACアンプとした方が良いかもしれません。
 回路のオフセットバランスはそれほど問題になりませんが、回路電流の温度特性を含めて安定に動作させる為にはDCサーボをかけるかACアンプとしてDCゲインを下げてしまう必要があります。
まずは、下の回路図のように2番目の方法で検討します。
真空管で作ったアンプでは出力段に10mAほど流しましたが、今回は小型にするため4mAほどに電流を減らして作る事にします。SICMOSを使うとき注意しなければならないのは12~16mV/℃ほどある温度特性です。回路図には書かれていませんが影響を無くす必要があります。(ソース電流を定電流化で対応予定)
 
 出力段をSIC_MOSトランジスタにする場合一番気をつけなければいけないのが温度補償です。基本回路は金田先生の設計されたものを流用させていただきました。ここでは初段の出力バイアス電圧をFETの温度特性を持たせた定電流回路を使って出力段のアイドリング電流の温特をキャンセルさせる方法をとります。
差動のカソード側を定電流にして温特を持たせても同様になりますが乗数を合わせ込むのが難しいのでこの方法を考えました。FETを出力SICMOSと熱結合させます。
保護素子や発振止めの素子はまだ記入していません。
   2019/5/2 up
 右の図が温度補償の回路になります。
2SK366はIqポイントが13mAぐらいでそれより小さいと電流が高温で増え低温で小さくなる特性を示します。
差動回路の電流はカソード側の抵抗91kで決まり温度変化はほぼ無視できます。
2SK366により±50℃温度が変化すると約±0.4mA電流変化がおこりますので足りない分は3.6kの抵抗に流れることになり、温度変化で1.4V~4.3Vの変化が抵抗の両端に発生します。これにより2段目の差動電流が変化し1.8kに生じる出力段のバイアス電圧が変化し温度補償が行われます。
(真空管の品番が間違っています。5670です。)
 2019/5/3 up
 左がSTAXのソケットになります。市販では売っていませんのでメーカーより購入します。
このソケットは、昔のスタンダードバイアスタイプの物でセンターピンのある6ピンです。
現在はプロバイアスのヘッドフォンがほとんどなのでセンターピンのない5ピンを使用します。
スタンダードとプロバイアスの違い
   古い資料なので最近の仕様とは異なるかもしれませんがバイアス電圧は変わっていないはずです。
SR-Σは構造的に他の製品と異なり感度が低くなっています。以前の試聴でもスタンダードバイアスでは
ダイナミックレンジに余裕が無くプロバイアスが出てから購入した経緯ががあります。
  SR-Σ SR-Σpro
 振動膜と固定極のギャップ 0.3mm  0.5mm
振動膜の厚み 2.0µm 1.0µm
バイアス電圧 230V 580V
  主な使用部品
●SCT2H12NZ
 SCT2450KEのさらに1/2の能力ですが、入力容量が1/2になりますのでこのような電圧増幅に用いる場合は最適です。
フルモールド品なので放熱も簡単です。
コンデンサーヘッドフォンアンプは、容量負荷をドライブすることになるのである程度電流を流して使うためこのくら大きなパッケージパワーのあるのも安心できます。 
●5670
 今でも安く購入可能な双三極管です。小型ですが耐圧が300V~330Vありμも34ほどあるので非常に使いやすい球です。
初段を半導体で構成する場合は耐圧の高いNchのMOSトランジスタが必要になりますが今回は真空管を採用しました。問題点は電源投入時のディレーです。
7.真空管NewCHPアンプ  
 真空管コンデンサヘッドフォンアンプも完成してから30年以上が経つ。2段構成ではゲインが足らないので負帰還かけられなかったがFETを追加して3段アンプとして構成を見直してみました。
出力段の負荷にトランスを使っているのでうまく直流帰還による回路の安定には期待できない。つまり素子そのものの温度安定度があるかにかかっています。場合によっては初段のカソードを繋げている150Ωを数kΩに変えてパラに交流的に150ΩぐらいになるようにCRを繋げて直流帰還ゲインを上げてやる必要が出てきます。
   2022/1/15
   
   
   

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