アンプの修理  
1.CA-1000
 友人からヤマハのCA-1000のメンテナンス依頼がありチャレンジすることになりました。
40年近く前に購入した物で色々チェックしながら部品の交換やクリーニングを行います。
ケースを開けて直ぐわかるのがパワー電源の電解コンデンサの頭が膨らんでいる事です。やはり電解コンデンサはすべて交換が必要です。ニッケミのコンデンサが使われていたので最新のミューズタイプを使用することにします。下の右の写真は裏の電源基板です。
 
 上の回路がMCカートリッジ用アンプです。裏の入力ピンの近くに立てた構造で小型基板が入っています。
基板から回路をひろったので間違いがあるかもしれませんが初段が2SC1345をベース接地増幅2段目をエミッタ接地増幅で直結させています。(発振止めの位相補償が抜けています)交流的には3.9k+47μFにより負帰還をかけています。
2SC1345はローノイズトランジスタでネットを見ていると40年も使われていると劣化している場合があるような事が書かれていたのでノイズなど調べて交換するか判断したいと思います。
この頃のトランジスタはフレームが銀メッキさせていたので酸化して真っ黒になっています。今のトランジスタは半田メッキさせているので古くなっても黒くはなりません。
 2013/12/7 UP
 30年以前のモールドトランジスタのフレームには半田付け性をよくするために銀メッキが使われていましたがリードフレーム間にウィスカーが発生し大きなノイズを出すようになったりしました。(銀マイグレーション)
色々な金属でウイスカーは発生するようですが、今は改善されています。
 2013/12/27 UP
 
 
 パワーアンプの基板を取り外すためには出力段のトランジスタを放熱器に止めているネジを外す必要があります。再度取り付ける前にトランジスタと放熱器をクリーニングするとともに熱抵抗を下げるためにシリコングリスを塗ります。
 パワーアンプの出力段には18000μFのコンデンサが使われていますがなかなか同等の物が見つかりませんでした。たまたま秋葉原を散策していた時に若松通商で見つけて購入することができました。
(50mmφの大きさでないと取り付けることができません。)
右上の写真が取り外したコンデンサーです。
MCアンプ基板,イコライザ基板,トーンコントロール・フィルター基板,パワーアンプ基板,電源基板の電解コンデンサをすべて交換しました。40年前の製品ですが一度メンテナンスをメーカーに依頼しているので他に大きな問題はなさそうで、ノイズも気になるほど悪化していなかったのでそのほかの部品の交換はしないことにしました。以上でメンテナンスの終了です。
2.KA-2002A  
 この機種は、1972年頃の物で45年ほど前の物になります。片チャンネルのイコライザのみ音が出ないとのことで修理依頼された物です。
回路はディスクリート半導体によるシンプルな構成でパワーアンプは出力段がダーリントンとインバーテッドダーリントン構成になっています。PNPのパワートランジスタに周波数特性の良い物がまだなかった時代です。
   2019/12/7 up
 上の図がイコライザになります。電解コンデンサは何十年もたつと電解液が抜けて容量低下が起きているので交換することにします。イコライザの2段目のトランジスタが壊れていましたので交換して動作OKとなりました。
この頃のトランジスタはリード線が銀メッキされており長年の動作でウィスカーが発生した可能性があります。(ショート不良) 
   
3.A-911  
 オンキョウのA-911の修理を頼まれた。
この製品は、1994年に発売されたもので購入して20年以上たっている。
ただ使用頻度が低いせいか内部の汚れや部品のダメージはあまりないように思える為問題の個所周辺だけのリニュアルを行うことにした。
修理依頼の内容は、右側のスピーカーの音が突然聞こえなくなるという事でした。
 一応一通り音楽再生を行い確認すると、フォノ入力のノイズが右側で大きくなっている事も確認できました。
レコードを聞くことは無いようなので直さなくても良かったかもしれませんが一応修理することにしました。
ブロックごとに確認を行いパワーアンプは正常に動作をしていました。保護回路も問題ありませんでした。
不具合が起こっている部分がトーンコントロール基板にあることが解りました。
本来なら不具合の原因を追及して直すべきですが、現象から考えてリーク電流の温度変化で起こるのではと推測し可能性のある部品を全て交換する事を試みました。
 
 上の基板が、イコライザアンプ及びラインアンプ群になります。
左のDIP8ピンは、NJM4565DDというJRCのローノイズ選別のオペアンプになります。
真ん中から右に並んでいるシングル8ピンのICがロームのBA15218と言うオペアンプ(3個)になります。
下についている多ピンのICがセレクタのようです。この製品はリモコンでボリューム含めセレクタを操作することが出来ます。
電解コンデンサとオペアンプを全て交換しました。
オペアンプは全てNJM4580というオーディオ用に改善された物に置き換えました。
この製品が発売されたころには4580はまだ無かったと思います。
コンデンサについては、ニチコンのMUSEを採用しました。電源の所にOSコンをつけて見ました。
この部品交換でノイズについては改善できました。
   '22/2/3 UP
 上の写真がトーンコントロール基板になります。フロントパネルを外して取り出さないと修正出来ないのでネットの情報を探しました。全ての基板の取り外し方が解る写真が掲載されているところが見つかり外すことが出来ました。
ここに使われているオペアンプがNJM4565の9ピンタイプのICでした。今は、8ピンタイプしかありませんので右詰めに刺します。(1ピンがNCなので) 昔はたしか逆差しで壊れないように9ピンにしたと思います。
電解コンデンサとオペアンプを全て交換したものが下の写真になります。
お気づきの方もおられるとは思いますが一部のコンデンサは無極MUSEを使用しました。回路を見るとオペアンプは約±13Vほどの電源で動作しており信号系がカップリングコンデンサで繋がれている構成になっています。そこで気が付いた部分に無極コンを採用しました。
経年劣化でリークが増えるとオペアンプの出力が0Vからズレる場合もありますのでコンデンサに逆電圧がかからないともかぎりません。
オペアンプはすべてNJM4580にしました。(DIPもシングルも購入可能)
以上により信号が突然出なくなる現象も無くなりました。
 
   
4.AU-6500  
 友人の依頼でサンスイが1973年に発売したプリメインアンプを修理することになりました。
この時代のアンプはまだアマチュアが作るのとそれほど変わりがなくスペースも十分あり修理しやすい構造でした。線材も基板に直接半田付けしています。
症状としては、電源を入れると入力ない状態でもバリバリ音がし始めしばらくすると保護回路が働きリレーが出力をOFFにするということです。
この状況でも一瞬は音楽が鳴る様なので電解コンデンサーのリークや容量抜けの影響が考え全数交換することにしました。
 2023/2./24 up

*右下の金属の箱にイコライザ基板が入っている

*トーンコントロール部
 基板に付いている電解コンデンサーの数が全部で50個全て同耐圧以上のコンデンサーに交換しました。大型のブロックコンデンサー4個については、この当時の物に比べて半分以下の大きさになっていますので多少の容量アップを行いました。
具体的には、パワーアンプ用電源の6800μFを10000μFに、プリアンプ用電源の2200μFを3300μFへ変更しました。ついでにプリアンプ用の整流ダイオードをファーストリカバリーに変えました。
電源コードも周りの被覆が固くなっておりましたので交換しました。
以上により下の写真のように変更されました。
 2023/2./24 up 
 以上の置き換えを行った結果出力の保護回路が働く事は無くなり、次に行ったのがスイッチとボリュームのクリーニングです。それほどひどい状態では無かったので分解掃除までは行わず接点復活剤で済ませています。PCオシロで周波数特性や歪を簡易的に確認し問題ないことを確認してあります。
お金を掛ければ更に改善する事は可能ですが限がないのでここで完成としておきます。十分昔の性能は得られていると思います。
   2023/2./24 up
 イコライザの方チャンネルがおかしいとの事で基板の改善を行うことにしました。
AU-6500は、1972年にAU-7500と共に発売された物でイコライザ基板を見ると同じ物が使われています。ただAU-6500にはマイク入力が無いのでイコライザをフラットアンプとして使えるように切り替える為の部品がついていません。下がAU-7500の回路から類推した物です。
一部定数が違うようですが問題のない部分です。
上のクラスにAU-9500という製品がありますが、イコライザは多分同様の回路で構成されています。真空管アンプから半導体に置き換わりメリットとしてアンプの直結する回路が出始めた時期です。
  2023/3/5 up 
 使われているトランジスタは、東芝の物で1970年ごろはHfeが高いので良くオーディオ回路に自分でも使用していました。この時代はネットも無く仕様書を東芝に問い合わせると青写真のコピーを郵送してくれました。懐かしい時代です。ここは現在手に入る東芝の2SA970と2SC2440に変更します。
この他一部のCRを最新の物に変更したいと思います。
  2023/3/5 up 
   電解コンデンサーのみを交換した基板です。
方チャンネルだけバリバリに歪むという事でまずは怪しいトランジスタを交換することにしました。
CRについてもRIAAカーブの素子や入出力部分初段・次段の負荷抵抗などを金属皮膜抵抗に置き換えました。
 周波数特性を測定してわかったことですが、AU-6500は800kHzぐらいにピークをもっており位相補償が足りないようです。
上の回路は、AU-7500の物からフラットアンプ機能を取った物ですが位相補償に47pFがついています。
AU-6500には12pFが付いていました。
   AU-6500には2段目に2SC1000BLが使われていますが、AU-7500ではGRに換えられているので同様に変更しました。
位相補償にはSUNTAN社のマイカーコンデンサを使用しました。RIAAのコンデンサーにはメタライズドポリエステルフィルムコンデンサを使用しました。金属皮膜抵抗は、オーディオ用ではないですが自作アンプでよく使う抵抗を使いました。
動作確認しながら置き換えを行いましたので不具合の原因を確定できました。
方チャンネルのNPNトランジスタが歪を出す原因でした。
多分ウィスカーが原因の可能性があります。
左右のアンプの周波数特性を測定しちゃんとRIAA特性が出ている事を確認して終了としました。
 交換した部品の中でコンデンサの経年変化を参考に見てみました。製造してから50年たつので興味があります。
初期製品バラツキや測定誤差を含めた数値になります。
左から2200pF,8000pF,1500pFでイコライザに使われていた部品になります。音質的には右のスチロールコンデンサーは悪くないのですが他のコンデンサーを変えるのに最適な組み合わせがなかったので交換しました。
左から、2060pF,2100pF,7880pF,7960pF,1300pF,1380pFとなり±10~20%の部品と考えれば優秀なレベルと思います。スチロールは吸湿しやすいので経年変化が見えているのかもしれません。
 最後に外した不良のトランジスタを単品確認しましたが、問題なくHfeが300あり正常動作しました。拡大鏡での外観も問題なさそうなので原因は多分アンプの発振と思われます。入力無信号時のノイズレベルが問題なかったので経年変化でアンプが不安定になり入力が入ると発振する現象ではないかと思われます。
このアンプの所有者の評価も上々で良かったです。
2023/3/14 up 
 
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