アンプの修理  
5.AU-D607  
 AU-607・707でプリアンプへの差動アンプ及び±電源と左右別電源(トランス)を採用し、画期的な3段増幅パワーアンプにより競合に打ち勝つべく意欲的な製品が1976年に発売されました。
その2年後にAU-D607が、イコライザにFET差動入力で3段増幅のDCアンプ構成のプリメインアンプが発売されました。今では回路シミュレーションが出来るのでそれほど難しくないでしょうがこの時代に発振しやすい3段増幅を採用したことは素晴らしいことです。
パワーアンプ以外にも初段にFETを採用することで入力のコンデンサを無くし音質の向上に貢献しています。1976年ぐらいから部品による音質の違いが言われるようになり色々なオーディオ部品が作られるようになりました。
友人から、次のメンテナンス候補として依頼されているので今のうちに色々調べることにしました。
   2023/3/10 up
 上の回路がイコライザ―部になります。AU-D607そのものの回路ではありませんがほぼ同じと思われる物です。AU-607ではバイポーラトランジスタ差動入力の2段増幅のACアンプでした。
FETには2SK129が使われています。電源電圧が±32Vほどあるので出力当たりのトランジスタには耐圧の高い物が使われています。
DCアンプを採用しているのも画期的ですがオフセット調整が初段の可変抵抗で行われています。
DCゲインが60dBほどありますので長く使われていろとオフセットが結構狂ってくる可能性があります。
出力は、コンデンサでカップリングされているので多少の変動は問題ありませんができればAU-D607fのようなDC帰還をかけて使うほうが安心だと思います。
 上の回路がMCアンプになります。
どうも違うアンプの基板をネットで見てしまったようです。(バージョンがあるようで初期は上の回路だったのかも?)下に掲載したものは、現物の基板を見て作成した回路図になります。
回路に間違いがあるかもしれませんがイコライザ回路に比べてシンプルな回路になります。(±電源のACアンプ)
初段のトランジスタで性能が決まります。この頃から初段に使われる超ローノイズトランジスタ(ベース広がり抵抗の小さい)が開発されて市場に出始めていました。
製品によってはこの抵抗値を下げるためにトランジスタを何個かパラっているものがあります。
   2023/3/29 up 
 メンテナンス依頼のAU-D606が手元に届きました。
中古購入時は問題なく動いていたのですが突然方チャンネルにノイズが入るようになりしばらくすると保護回路が働いてしまうという事です。この製品も40年以上経っているものですからまずは電解コンデンサの交換から行います。
   2023/3/29 up
 470μFのコンデンサーが6.3Vと16Vの2種類使われていましたがコンデンサーが小型化されたこともあり全て16Vタイプを使用しました。
このアンプはあまり使われることはなさそうなのでこの程度でトランジスタのノイズ含めた特性悪化がなければまずは終了とします。
位相補償コンデンサはスチロールが使われています。
 AU-6500やAU-G607で使われているスチロールコンデンサの容量を測定しましたがスペック内の数値で問題ありませんでした。
   
 
 パワーアンプ基板になります。
大きな電解コンデンサが470μFで耐圧が63Vのコンデンサになります。秋葉原でも中々在庫切れが多く購入するのに時間がかかります。
入力のオフセット調整用の可変抵抗を交換しました。縦型を探したのですが投入する向きが180度異なる部品しか見つからなかったので横向きにしました。同じものが見つかり変更しました。
(このボリュームが原因で保護が働くことが多いらしい)
更に、セメント抵抗を金属抵抗に可変ボリュームをもう一つも変更しました。
 オフセット調整を行いアイドリング電流も調整を行いました。
変更前の測定値とネットの情報から50mA程度に合わせました。
   2023/4/10 up
 イコライザ基板とMCアンプ基板が隣り合わせに配置されています。
基本電解コンデンサを換えていますがイコライザの電源ラインにはニチコンKWを使用しました。(他はFGです)
本来47μFを付ける所にフィルムコンデンサの1μFを付けています。
今回、電源のレギュレータにも一部変更をかけますがレギュレータにあまり大きな容量は必要ないという考え方で
100μF+フィルムコンデンサという組合せにしました。
この後電源・保護回路基板となりますが、プリアンプ・パワーアンプ全てが左右独立電源となっています。
ここもバージョン違いがあるのかわからないが、プリの電源にはツェナーとバッファによる±電源が用意されているはずです。(無帰還レギュレータ)
ここを帰還形のレギュレータに置き換える作戦を立てています。(このアンプも次の世代では帰還形のレギュレータに変更しています)
   2023/4/1 up
   左が計画しているレギュレータになります。元は、制御用トランジスタが無くコレクタとエミッタが繋がっているような回路です。
製品設計では安定度重視でコンデンサが色々入りますが音質重視で進めます。
トランジスタを追加するので小基板を作り外したツェナーの所に挿し込むように取り付ける予定です。
70年代のトランジスタは、フレームに銀メッキされているタイプが多く足が真っ黒になっている物はウィスカが発生する可能性があるので交換しておこうと思います。
ツェナーは、手持ちの日立のローノイズタイプを使用します。
出力の47μFは、元々220μFが付いているのでそのまま使用します。
 レギュレータを組み込んだらリップルリジェクションが悪くて使い物にならなかった。心当たりとしては抵抗負荷にしている点などありますが(本来定電流)調べると負荷電流が50mAも流れている事がわかりました。
整流後のコンデンサ470μFが電流に比べ小さすぎるのが一因で1V以上のリップルが入力されることになります。
部品最小限の追加でレギュレータを構成させているので左の回路に変更することにしました。
 測定してわかったことがもう一つあります。入力電圧ですが52V近くある事です。同等製品の回路図には45Vとの記載があるのですが実際には52V近くありました。そのため出力トランジスタに19V×50mAの発熱が生じ
触れなくなる程度になっています。
パワーアンプのアイドリング電流が設定より低くなっている為に電圧が上がっているのか確認が必要です。
当初入力に10Ωが入っていましたがレギュレータ化により取り除いていますので更に発熱が上がるためパッケージの大きいトランジスタと放熱器を変更しました。
 本の回路性能がわかっていなかったので回路図を基板から作成しシミュレーションしてみることにしました。
入力側の10Ωは熱の分散のためと思われます。リップル除去はほとんどが47kの抵抗と100μFがメインでそれにツェナーがクランプしています。(実際はツェナーの動作抵抗50Ωほどがパラに入ります)
トランジスタのエミッタ出力で-63dBの除去率で、出力の6.8Ωと220μFにより-4dBほど更にダウンさせています。 シミュレーションすると1Vのリップルが出力で0.5mVぐらいになりました。(負荷電流を50mAほど流して)
 変更後の電源基板が上の写真になる。放熱器も換えるためにトランジスタのベース・エミッタの配線を逆にして少し大き目な物に換えました。トランジスタは2SA1008と2SC2331を採用。これでもトランジスタは熱くなりますが触れる温度ぐらいに下げることが出来ました。
 
 最後に整流ダイオードをSICショットキーバリアダイオードに換えました。
チョット贅沢かもしれませんがオーディオメーカーの試聴室で一緒に聞き比べして最高に違いが出た部品ですので採用しました。
  2023/4/4 up 
 パワーアンプ用電源のコンデンサ12000μFに330μFがパラについていましたが1000μFに交換しました。
今回は、配線を外すことなく部品交換を行いましたので配線の束線を全て外しましたので新たに結束バンドで固定しなおしました。友人のアンプなのでやりたい放題の改造になってしまいましたが評価はどうなるでしょうか?
2023/4/10 up
 結論から言うと、大成功のようです。
まずは高域が良くなってる事がレコードに針が振れた瞬間にわかったそうです。シンバルの音、ボーカルの発声のリアルさが今までとは違います。音全体に艶があり低域含めてハッとさせられるような瞬発力のある生演奏を聞いているかのようです。(友人より)
 やはり電源の強化は重要なファクターですね!
   2023/4/12 up
E-303の改善  
 今回は、手元に入手したアンプのリファインをしてみたいと思います。
このアンプは、1978年にアキュフェーズより発売されたプリメインアンプで出力段にMOSトランジスタを使用しています。生産から40年以上立っていますが10年ほど前にメンテナンスをしていただいています。
昔の部品は、スイッチなど分解掃除して新品のように再利用できる品質があり感心してしまいます。
アキュフェーズの中では普及帯の製品であり部品交換などにより改善の余地があると判断して実行することにします。(壊れていないのです)
   2023/9/22
 まずは、コントロールのアンプ基板になります。オフセット調整用可変ボリュームを交換します。また初段部分を主体に抵抗を金属皮膜抵抗に、帰還部分の高抵抗も金属皮膜抵抗に交換します。
電解コンデンサは、電源部分と帰還部分に計6個使われていますが電源部分は、導電性高分子アルミ個体電解コンデンサー へ帰還部はフィルムコンデンサーに変更しました。
交換する必要は無かったのですが、出力段のトランジスタを2SA966/2SC2236からTO-126パッケージの2SA1359/2SC3422へ変更しました。(20mAほど電流を流していて基板の中で一番発熱している部分)
エミッタ抵抗30Ωの両端電圧を測定すると750mVとなり電流が流れ過ぎていましたのでベースへのバイアス抵抗を430Ωから360Ωに変更しました。
このままでも半導体の温度特性により時間がたつと電流が増えてしまうので温度補償が効くように対策を考えることにしました。(言葉ではわかりにくいので回路図を載せます)
   2023/9/24
 出力の電流を決めている部分のみを回路図にしてみました。電源は、±15Vが供給されています。
初段の作動回路には15kによる電流が流れるのでコレクタ抵抗の両端には、1.12Vの電圧が発生し2段目のトランジスタには3mA程の電流が流れます。
430Ωの両端は1.29Vとなりこの半分の電圧が出力エミッタ抵抗に発生するとしたら21.5mAの電流が流れることになります。
回路構成から2段目の電流は温度変化により10%ぐらいの変動があり出力段では30%前後の変動が考えられます。(ざっくりです)
そこでバイアス部のダイオードを出力トランジスタと熱結合をすることにしました。
左の写真がこれになります。
出力段の片側に真鍮の板を付けてダイオードに熱結合しましたがやりすぎると片側だけ放熱器を付けたことになりアンバランスになります。
多少効果あったかな程度でした。
 このアンプを使用してみて一番使いずらいのがスピーカー端子です。
銅の撚線なら挟み込めるのですが固い単線などではしっかり固定できずアンプを動かすと抜けてしまう事が起こります。
 最近の端子はバナナプラグで抜き差しができてアンプを繋ぎ変えたりするのが非常にらくにしっかり行える様になっています。
そこで現行端子の金属部分を外して左の写真のように丸穴を大きく削り新たな端子を付けることにしました。
見た目もまあまあにできたと思います。
   
 次の改造は、電源基板に着手することにします。 アンプ作りをしていて電源を変えることにより音質の変化が大きいと感じていますのでパワーアンプをいじる前に検討する事にします。
1978年時点で選べる部品と比べて選択枠が広がっていますので私なりに考えて変更をしてみます。
まずは私のホームページで実施している整流ダイオードをSICショットキーに変えることです。しかし±8V電源のみ
Vfロスを考えファーストリカバリーダイオードに変えることにします。
次に電解コンデンサの置き換えです。容量抜けの気になる所はなさそうなのであくまでも音質改善がありそうな場所のみ独断で変更してみます。
次がレギュレーターの回路や使われているツェナーダイオードの変更です。
使われているツェナーはRD6.2EでNECの今は廃番となっているもので10mAほど流している。それに対して同様の日立のローノイズツェーナー(HZ6L-C2)を電流1mAほど流して使用することにします。
今回改めてノイズ測定を行ったのですがツェナーダイオードにより20dBほどレベルがバラつくので十分評価して変更を行いたいと思っています。
ツェナーダイオードのノイズを嫌って抵抗分割で電圧を作っている部分もあるのでできるだけツェナーに置き換えたいと考えています。(電源インピーダンスを下げる効果はあるので)
 上の基板が変更をかけた電源基板になります。中央のTO-220形状の物がSICのショットキーダイオードになります。このアンプは個人的に使用する目的で改造していますのでヘッドアンプを使用しないので8Vの電源用ダイオードは取り除くだけにしました。外部にパワーアンプ用電源のダイオードが付いていますがそれもSICに変更しました。
回路的に変更をかけたのは、±32Vのレギュレーターの+電源は6.2Vツェナーを基準に構成していますが-電源は抵抗分割で6.2Vを作っていたのでツェナーに置き換えました。
ツェナーダイオードに電流を多く流してローノイズ化をしていましたがローノイズツェーナに交換して1mA程度の電流で使用することにしました。
この電源から抵抗分割で±16Vの電源を作っていますがそこもローノイズツェナーに置き換えました。
目につくところでは、1Wの酸化金属被膜抵抗が使われていましたがアンプにかかわる所はオーディオ用金属皮膜へその他で発熱が大きいところは2W金属皮膜抵抗に変更しました。
小型の電解コンデンサは40年以上立っているので交換しました。
左の出力リレーは、メインテナンスしてもらったときに交換してくれているのでそのままにしました。
この基板の変更が劇的に音楽を生演奏に近づける結果となりました。
人の声がほんとに生の声のように空間に放出されています。色々変更してしまったので一番効果があったものがどれかはわかりません。変更回路は後でアップさせていただきます。
   2023/10/4
 32V電源回路です。ツェナーダイオードにRD62Eを使用し2.4kの抵抗で10mAほどの電流を流して使用していましたがHZ6L-C2に変更して24kで1mAほどの電流に変えました。-電源はツェーナ部分が抵抗になっていたのでツェーナに置き換えました。(帰還抵抗は、±出力から取っている)
この時代はオーディオがピークの頃で性能・音質重視でたっぷり電流を流して低インピーダンス設計にしていましたし入力電圧も45Vより32Vを作り出していましたのでアンプにとって十分な環境が作り出されていたと思われます。
 前半戦の最後は、パワーアンプ基板になります。CDを聞いている時にはほぼこの3つの基板が動作して音楽をスピーカーから再生することになります。
最近は、オーディオ部品の保守・廃番が進んできており在庫切れで購入できないものが出ています。
まずは方チャンネルだけ改造してみました。初段FETへの電源供給で耐圧やゲートリーク電流を抑えるべくツェナーダイオードにより電圧を±24Vに抑えている回路があります。
ここには一般品のNECのツェナーが使われていましたが、日立のローノイズタイプに変えることにしました。このツェナーも市場在庫のみなので12Vの物を2直に繋げて使用し、流す電流も2mAほど少なく設定しました。
使用している抵抗も一部金属皮膜抵抗に変更しています。
入力カップリングコンデンサはポリプロピレンフィルムへと、電源の電解コンデンサも変更しています。
出力トランジスターのアイドリング電流調整とオフセット調整についても可変抵抗器を変更しました。
効果は、どうでしょう?
なかなか言葉で表すのが難しいのですが音の鮮度が上がったようです。ライン入力から出力までとしてはほぼ完成です。いよいよ後半はイコライザ回路になります。
 初段の電圧を下げるためにツェーナによりクランプを掛ける回路になります。
RD24Eに6mAほどの電流を流して使用していましたがここもローノイズツェーナに置き換えました。低いツェーナ電圧のほうがローノイズであり12Vを2個直列につなげて使用し、電流も3~4mA程度に抑えました。

<HZ6LC2>

<GDZJ8.2C>
 ツェナーダイオードのノイズをしっかり測定したことがなかったのでPCオシロで測定してみました。最初のグラフがローノイズタイプで次のものが手元にあった標準の12Vツェナーダイオードになります。少なくとも20dB程の
ノイズレベルの違いが出ています。
 20dBの広帯域アンプを作成しツェナーダイオードのノイズを測定し直しました。電源にはすべてリチウム電池を試用し広帯域のAD8022を10倍のアンプにして使用しました。ローノイズの6.2Vツェナーは5μV程のノイズレベルでした。2.4mAの定電流を流して測定していますのでGDZJにとっては少な目です。5mA流せばノイズを減らせると思います。測定では200μV程のノイズレベルでした。
   
   

M.I.の趣味の部屋   BACK