送信管837シングルアンプ
1.小型送信管837
 837は小型の送信管です。807よりも小型(特性的に)でトッププレートな為オーディオでは全く人気のない球です。しかしプレートの形状や作りを見るとさすがにすばらしい送信管であると言えます。ぜひオーディオに使用し満足できるアンプを製作したいものです。
下に主なスペックを掲載します。
837  
 ヒーター電圧 12.6V
 ヒーター電流 0.7A
gm 3400μmhos Ip=24mA
最大プレート電圧 500V
最大サプレッサーG電圧 200V
最大スクリーンG電圧 200V
最大プレート電流 40mA
最大プレート電力 16W
最大サプレッサー電力 5W
最大スクリーン電力 5W
 PT−15同様G2にかけれる電圧が200Vしかなく単純に耐圧をオーバーさせるのはあきらめました。そこで考えたのが外付けMOSトランジスタによる分圧型三極管接続によるアンプです。この方法によりプレートには400V近くをかけた三極管接続のアンプとして動作させることができます。
 うまく動作してくれるかわかりませんが、チャレンジしてみます。
出力トランスには、同様のメーカーからOP5K8Aを4Ω端子に8Ωのスピーカーをつなげてインピーダンスを10KΩとして使用します。
 
 ドライブ段(初段)の真空管を12AY7A(6072A)より6414に変更しました。
X7やT7と比較するとY7はドライブ能力のある球で、昔プリアンプに使用してお気に入りの真空管です。ただご多分に漏れず価格の高騰で他にリーズナブルなものはないか探していました。
「無線と実験」を読み返していて見つけたのが6414です。この球に3.7mA(125V)ほど流して使用しますのでカソード抵抗は400Ω程度に変更です。 
2013/9/2 UP
 
 考え方は単純でしたがトランジスタの入力容量が大きく回路変更をしてみました。 SCT2H12NZを採用することで最初の回路で動作実現できました。帰還容量が特性に影響します。
トランスへの影響を避けるため高抵抗を使用していますが、もう少し下げることで高域特性を改善させています。
 (470k→150k)ゲートの保護ダイオードですがツェナーに変えています。
下の写真が評価中のアンプになります。
 
 上の回路は、837を五極管接続で使用した場合のスピーカー端子で見た周波数特性です。
いわゆる五極管接続の周波数特性になります。
出力トランスの影響で100kHzあたりにピークを生じています。 
 上回路図は三極管接続にしたもので左のようにゲインは下がりますが周波数特性は低域高域共に伸びています。
この特性なら無帰還や多少の帰還をかけて使う事が出来ます。
 初段に使用している6414はオーディオ用(アナログ)に作られた真空管ではないのであまり特性は良くはありませんが、動作ポイントを選んでできるだけ歪の少ない使い部分を使います。
この定数で、プレート電流は2.7mAほど流れます。
ヒーター・カソード間電圧が100Vしかないのでヒーター巻き線に50Vほどのバイアスをかけてあげる必要があります。
下にこの回路の周波数特性を載せておきます。
低域は出力のカップリングコンデンサと負荷抵抗で決まります。
837を三極管接続で繋げたトータルの回路図と周波数特性を下に載せておきます。
 性能改善はあるかもしれませんがこの状態で1.5W(歪2%)の出力が得られました。
0.5W時は0.25%(2次高調波がメイン)ほどの歪になりました。
小型パワーアンプとしてはゲインがあるので6dBほどの負帰還をかけてあげると良いかもしれません。
 
 
*電源端子を280V使用で変更加えました。               
三極管接続では、発振を押さえるため100Ωを追加しています。
 小型送信管(837)は非常に構造がしっかりした物がありこれをオーディオに使えたら良い音がするのではという思いがあり検討を初め作りやすい回路を掲載させていただきました。
 初段をレギュレータ出力で動かしていますが抵抗とコンデンサに置き換えて動作させることも可能です。
初段の電源を250Vになるように抵抗を選びます。
 オーディオ用真空管に比べて価格の安い送信管を使い真空管の音を楽しんでいただきたいと思います。
   2023/5/1 up
 上の周波数特性はトランス本来の5kΩの特性でしたが色々検討した結果やはりスピーカーを4Ω端子に繋げて10kで駆動させるのが音質的にも良いことがわかり変更しました。周波数特性的には悪くなりますがそれほど帯域が狭くなったような印象はありませんでした。
下に、全体回路を掲載します。
   2023/6/8 up
 ケースの加工は、大分適当にするので上手くないですが一応下に載せておきます。
左下の方に250Vのレギュレータを付けました。中央上にあるのが3Hのチョークトランスになります。出力トランスはGorinのOP5K8Aを手持ちの中から使いました。5Kのトランスなので4Ω端子に8Ωを繋げるようにしています。
 

*評価中のセット(モニターオーディオSILVER S1にて試聴)
 最終的な周波数特性です。
あまり良くないと思われるかもしれませんが音質敵にこちらの方が良かったので決めました。
(*入力ボリュームをMaxにし忘れています)
今回のアンプはトランスなど家の在庫にある物を使いましたので正規の出力トランスを使えばもう少し良い特性になったと思います。
12AX7などのμの大きな真空管を使い帰還をかけるのも良い方法ではないでしょうか。
 このアンプは、オーディオ用真空管ではない低価格で購入可能なもので作成しましたので十分な結果が得られたと思います。
 歪何%まで許容するかで出力電力は変りますが1W以上の出力が得られています。
 
 低域の特性が音に現れてしまうので少し負帰還をかけて改善することにしました。
上回路図が最終回路になります。
初段の真空管は変えずに6414を使用し6〜7dBほどの帰還をかけました。カソード抵抗を少し下げて電流を増やしました。
出力は、1kHzの波形があたる手前の所で1.4W(測定ミス)0.8Wとなりました。(5%歪で1.2W)あり合わせの電源トランスを使用しているため想定より低い370Vほどしか加えられていません。450Vぐらい加えられるともう少し大きな出力が得られると思います。
 何れバイアス用のマイナス電源を作って少しでもパワーを上げてみたいと思います。
 モニターオーディオSILVER S1をハイパワーで鳴らすことは無理ですが十分実用になります。
250Vの例ギュレータは、7C5PPで作成した物を使用しています。
2.新型アンプにチャレンジ  
 この回路がちゃんと動作するかわからないがチャレンジしようと考えているものです。回路からコンデンサをできるだけ削減すること,837のスクリーンゲートをどのようにドライブさせるか色々検討中。うまく動いたら報告します。
   2017/10/26 up
 色々手を広げすぎたので中々時間がとれずにそのままになってしまっていますので837については、検討を終了したいと思います。
小型パワーアンプとしてもヘッドフォンアンプとしても十分使用できる特性が得られたと思っています。
3.主な使用部品  
 
OP5K8A  
 PT−15アンプ同様のメーカーを使用することにしました。 5kΩ8Wのトランスで高級感はありませんが、作りはしっかりしています。このトランスを使用した300Bのアンプを試聴して購入を決めました。
小型のわりに15Hz〜45Hz(3dB)の特性を持ちDC80mAも流すことができます。
 
837 
   この真空管を見つけたのがアンプを制作するきっかけです。トッププレートの送信管で作りがしっかりしています。
このような球が安く購入できるので是非オーディオアンプに作り上げたいと思いました。
6414 
   最初は12AY7Aを考えていましたが、安く購入できるこの真空管を知り採用することにしました。一般的に12AX7や12AT7などμを考えると選びますがドライブ能力の良いと思われるものを採用します。
 
SCT2450KE→SCT2H12NZ 
   SCT2080KEで検討していましたが入力間容量が大きいので現状一番小型SICMOSであるSCT2450KEを使用することにしました。 さらに容量の小さいSCT2H12NZへ変更しました。
   

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