ギターアンプの制作             
1.チャンプ風ギターアンプ  
考察
 現在の部品を使用してチャンプのイミテーションを作っても同じ音が出るわけではないのでこの時代のコンセプトを元に私なりに新たなアンプを作ってみたいと思います。
 プリアンプ部の真空管としてGT管の6SL7か6SC7を,出力管に6V6Gか7C5を採用することにします。6SL7や6SC7はプリンストン・モデルなどで採用実績があり、6V6G,7C5はオーディオで使用しているので在庫があり色々なメーカー製を試すことができるので候補としました。
G管はGT管に比べてメカ的な振動に弱いのでロクタル管の7C5を第1候補として考えています。
この真空管は第2次世界大戦のとき戦車や飛行機に採用された振動に強い構造のもので、スピーカーの箱と一体となる構造に向いているかもしれません。
 スピーカーについては、エレクトロボイスの8インチ(フェライト・タイプ)を第一候補として選びましたが他にアルニコで良い物が見つかれば変更するかもしれません。

【6C5GT】

【6SC7GT】

【7C5】

【5AZ4】
回路設計
 構想の回路図を上に掲載します。
初段を6SC7で構成する回路は、内部でカソードが共通になっている為自由度があまりなくチャンプ5C2のような使い方となり面白くありません。。そこでこのような回路構成を考えました。
 初段に6C5を使います。ピックアップからの信号は、シングルコイルで110mV,ハンバッカーで210mVほどあり15倍ほどしてもこの段で歪むことはありません。(ギター・アンプは、初段で歪ませない)2段目に6SC7を使用します。チャンプ5F1では12AX7を使用し出力からカソードに不帰還をかけていますが、そこで余っている球を差動として使用してゲートに帰還をかける方法をとりました。本来ならカソードはマイナス電源を設けてカソード抵抗を大きくしたいところですが、できるだけシンプルに作りたいのでそのままグランドを採用しました。整流管については5Y3も手元にありますが、6V6同様ロクタル管の5AZ4を使用することにします。
 電源トランスは、昔の製品比べて性能が良くなっている為同電圧の物を使用するとB電圧が高くなってしまいます。6V6はプレート電圧,スクリーン・グリッド電圧が315V,285Vですが、チャンプAA764の頃には6V6GTのパワー や耐圧が上がった(350V,315V)ためB電圧が高くなっている(?)ようです。もし6V6を使用してパワーアンプを設計するときには十分注意が必要です。
 コンデンサは下にあるように電源のカップリングにはスプラグの電解コンデンサを使用し、信号のカップリングにはオイル・ペーパー・コンデンサを使用します。
 昔真空管ラジオを作る時にはよくオイル・ペーパー・コンデンサを使用していました。

【電源用電解コンデンサ】

【カップリング用オイルペーパー】

【シングル出力トランス】

【電源チョークトランス】

【電源トランス】

  トランスは、出力がOUT-54B-57を5kΩにて使用
 します。
 電源のリップルを押さえるためにノグチトランスの
 10Hのチョークを選びました。
 電源トランスは丁度よいものが見つからずオーバー
 スペックですが100mAまで使用できるPMC100M
 を使うことにしました。

スピーカーボックス
 下に自作予定の箱の寸法を記載します。当時の5C1に近い寸法になっていると思います。
(部分的に変更しています)2009年に販売されたリバイバル限定品は横幅が少し狭くなっています。


裏面
スピーカー  
 
 オーディオで使用していたビクターの西独クルトミューラーコーンを使用した20cmのスピーカーが余っているので使うことにします。
2ウエイの中低域用ですが、7〜8kHzぐらいまでのびているので問題ないと判断しています。
  
エフェクターへの配線
   配線は、自作する方が安く購入できる。

 2芯シールド線を使用して外側のシールドは片側のみ結線します。
テスターにて完成後に内部でショートしていないか確認し完成です。
出力トランス
 チャンプに使用するのに最適なトランスを見つくろってみました。
PMF−6W
   ノグチトランスの6Wシングルトランスで、3k/5k/7kのユニバーサルタイプです。10WタイプのPMF-10WSがあり6L6やEL34などを使用する場合に使用します。
オーディオの小型パワーアンプに使われていて多くの自作例が雑誌やネットにアップされています。
●S−14
   アンディクス・オーディオの6Wシングルトランスで、2.5k/4k/7k/10kのユニバーサルタイプです。PMF−6Wより周波数特性が低域よりでハイライトコアを使用していますが非常にバランスの良い特性になっています。
OUT-54B-57
   今回使用している(有)春日無線変圧器の5Wシングルトランスで、5k/7kのユニバーサルタイプです。トランスカバーのついたKA-54B-57Tもあります。
オリエントコアを使用したリーズナブルな価格のトランスです。
2.プッシュプルギターアンプ  
 最近オーディオではSICショットキーダイオードを使用して満足する結果が出ており整流管からの置き換えを考えていました。ただ単に置き換えるのではつまらないのでアンプの見直しも考えていたところおもしろい真空管に出会いました。
4P1Lがその真空管です。以前に函館に亡命着陸したMig-25戦闘機に使用されていたといわれるものです。
ロクタル管で直熱管という変わり種です。最新の真空管ですからギターアンプのように無茶な使用にも使えると判断しました。
4P1L
   ヒーター電圧が4.2V,0.325Aでセンター端子付きの直熱真空管です。
低電圧で動作可能な小型パワー管で、プッシュプルで数ワットのパワーアンプが構成できます。この5極管を三結にして200V,30mAぐらいの動作で検討します。
ヒーター電圧が低いので6.3Vを整流してその出力を低飽和可変レギュレータを利用して定電流駆動を試みようと思っています。
 6608P
   一次インピーダンスが8kΩのプッシュプルトランスで15W・80mAなのでこの真空管には十分な大きさです。オーディオ用なので周波数特性も申し分ありません。
今回もスピーカーはシングルで使用していたものを載せ替える予定ですので6Ωとなります。そこで二次側の4Ω端子を利用することで12kΩのトランスとして使用します。
 
 
 回路イメージを上に記載した。7C5より小型のパワー管でプッシュプルでも5〜6Wのアンプとなる予定。
初段に、シングルで作った回路をそのまま採用することにしました。6SC7はカソードが共通の真空管で入力の反対側に帰還をかけることとカソード抵抗を大きくする(定電流)ことにより差動回路として動作させ出力段をプッシュプル駆動するものです。
出力トランスには、アンディクス・オーディオの6608Pか6620Pを採用します。
 2013/11/27 UP
 検討した結果の最終回路を下に掲載します。6SC7のカソード電圧があまり高くないのでヒーター電源を利用してマイナス電源を作り定電流回路に電圧を供給してあげることにしました。 
まだ定数の入っていないところがありますが調整してからPDFを貼り付ける予定です。
ケースは、シングルアンプを流用して組み直しで作ります。
2013/12/1 UP 
 
 小型のアルミケースで作成したので上図のような回路では制作が難しくなったため部品の小型化も含めて回路の削減をすることにしました。マイナス電源をやめてしまい2SK30のOランクを使用して1mA程度の定電流源としました。
カソード電圧は、約1.5V程度ですのでFETが十分定電流特性になっていない部分での使用ですがOKとしました。また、プッシュプルなので電源のチョークトランスを取ってしまいその代わりにコンデンサの容量を大きくしました。
そのほか多少常数の見直しをして完成させます。
   2014/4/6
 初段はプリアンプ程度に考えていたが、使用を考えたときオーバードライブのように歪むレベルまで増幅できるゲインを持たせ、出力にボリュームを入れてパワーアンプへという構成に変更しました。
ギターのピックアップ出力150〜400mVが入力されたときできれば10%以上の歪みになるような回路を検討。
  2014/5/24 
*2014/4/8UP
  プリアンプにどのくらいのゲインをもたせたら良いのか色々な製品のスペックを見て検討しました。 結論としては10mV(rms)入力でフルパワーになるようなゲインになるように決めるとプリ部で36dBほどの増幅が必要となります。
最大出力200mVを入力するとプリ出力で10Vとなりダイナミックレンジにまだゆとりがあります。オーディオならマージンを取りますが、ギターアンプでは無いくらいのほうが良いと思います。そこであと3倍プラスして46dBのゲインを持たせることにしました。
三極管1段増幅では不可能な為、6SL7を使用したA図の2段構成の回路か、初段にFETを設けた直結回路で6SN7を使用したB図の回路を検討します。 オーディオのイコライザにも使用している回路ですが、ソフトディストーションで2次歪の多い特性を狙って定数を決めて行きます。
 2014/5/31UP

【A図】                     【B図】
 真空管のヒーター用定電流回路に使用するICをLP3965に変更しました。ICの入出力間電圧が3Vぐらいしかとれないので多少スペック外使用でしたがこのICなら2.5Vまで動作するので採用することに決めました。上の回路図は3端子の前のままですが本来は5ピンで左の回路が正しい回路図です。
2014/4/9UP
No Vds=1.5V Vds=3.0V
1 1.04mA 1.06mA
2 1.12mA 1.16mA
3 1.06mA 1.09mA
4 1.05mA 1.08mA
5 1.16mA 1.19mA
 本来ならマイナス電源を用意して定電流回路にある程度の電圧を加えてあげた方が良いのですが、できるだけ部品の削減を図るために2SK30AのOランクを使用する事に決めました。
5個購入し定電流特性を測定したものが左の表になります。
このFETはQポイントが0.3mAほどにありますが、0バイアスでも若干負の温度特性もつ程度で実用上問題ないレベルです。
【2SK30Aの定電流特性 】 2014/4/18UP 
   箱の木材は加工しやすいベニアを使用して部分的に内部を補強しています。
見た目を考えて黒い牛革を貼り付けてみました。簡単に作れるよう立方体で作成しました。
完成したアンプを組み込んだら完成です。
直熱管を使用したプッシュプルアンプですので申し分ない性能を発揮してくれます。
ロクタル管はソケットが特殊ですが今は問題なく購入できます。
2014/11/16 UP
   

M.I.の趣味の部屋